Step1
はじめに
Step2
地球とはどんな形?
距離補正考えるには、まず、地球の形状から知る必要があります。
地球の形状については、山や谷のある地表より比較的なだらかな海水面で考える方が適当だということで、海水面に着目し形状を決めているそうです。
ただし、地球内部の質量や密度分布の違いで重力が一定でないため、海水面でもきれいな球状ではないそうです。
それでも地球の形状に近似していることは間違いない事実です。そして、この平均海水面のことを「ジオイド」と呼ぶそうです。
そこで、地球を表す形状として、ジオイドに近似した形状「GRS80楕円体」(何のことかわかりませんが、きれいな楕円体ということはわかります。)を日本では採用しているそうです。
また、測地座標系として地球重心を三次元直交座標系とする「ITRF94」(小難しい名前です。)を採用しているそうです。
よく昔は訳もわからず、偉そうに、「世界測地系で測量しています」といっていましたが、この座標系のことを世界測地系と呼ぶそうです。
以上の経緯から、実際にTSで距離測定した値は、「GRS80楕円体」で表した場合の値に補正する必要が生じてしまうことになります。
この距離の補正のことを、楕円体上の距離(投影距離)にすることから、投影補正と呼ぶそうです。
Step3
投影補正
投影補正計算は以下の式となります。
s: 基準面上(準拠楕円体上)の距離(m)
R: 6370000:平均曲率半径(m)
H1: 測点1の標高(概算値)(m)
H2: 測点2の標高(概算値)(m)
Ng: ジオイド高(既知点のジオイド高を平均した値
Sh: トータルステーションで測距した水平距離(m)
この中のNg(ジオイド高)は国土地理院のジオイド高計算で求めることができます。
Step4
縮尺補正
当たり前のことですが、設計図面は平面です。一方、投影補正は楕円体での距離になります。そのため、ある距離Lは図面と楕円体では異なることがわかります。
そこで、この長さの差を修正するため、縮尺係数が定められています。
縮尺係数については、平面範囲等を規程する平面直角座標系が設定してありこれに基づきます。
ここで、「あれ?」と気づかれた方がいると思いますが、平面直角座標系は「Day1」で書いたあの平面直角座標系のことになります。
この平面直角座標系は国土交通省で定められており、画像のとおりとなります。
先ほどの測量法の備考欄にある内容を図に表すと、一つの平面直角座標系の断面は画像のとおりとなるようです。
この画像からイメージできるかわかりませんが、測量地点によって楕円体から平面に補正する値は0.9999から1.0001の間になります。
なので、平面直角座標系の端に位置する地域では1.0001補正側に近づき、平面直角座標系の原点に位置する地域は0.9999補正側に近づくことになります。
一方、1.0000補正側に位置する地域はほとんど縮尺補正を気にする必要がないラッキーな所になります。
縮尺係数は、国土地理院の平面直角座標への換算で求めることができます。
また、縮尺補正計算は以下の式となります。
S=s✕K
S: 平面距離
s: 球面距離(投影距離)
K: 縮尺係数
Step5
まとめ
距離の補正には、投影補正と縮尺補正の2つがあります。まず、測距した水平距離を投影補正し、その後縮尺補正を行うこととなります。
その補正後の値が設計図面等上の距離となります。
最後に、例として補正計算をしてみます。
ある地域で測量し、トータルステーションでの水平距離計測が100mであった場合、平面距離(図面上の距離)は?(ただし測点1,2とも標高を200mとし、ジオイド高を40m、縮尺係数を0.99993とする。)
●投影補正
s=6370000/(6370000+200+40)✕100=99.996(m)
●縮尺補正
S=99.996✕0.99993=99.989(m)
となり、11mmの差がでる結果となります。
なので、精度を必要とする測量、距離の長い測量および標高の高い測量では、トータルステーションの水平距離の計測値に必ず投影補正と縮尺補正を行う癖をつけるほうが良いと思います。
普通なら、次は「トータルステーション(TS)で距離の測定」というテーマで書くところですが、距離については補正を行う必要があるので 前段として、その補正について書きます。
おいさんが、距離補正について知ったのは、橋梁下部工の現場でした。恥ずかしながら、それまではその存在すら知りませんでした。 (たぶん、測量学の授業で習っているはずですが・・・)
橋梁下部工では支間長(橋脚間の距離)を測量するのですが、この支間長の測定が長い場合には若干誤差が生じる場合があります。
橋梁下部工以外でも、距離が長い測定をする場合には、補正を意識した方が無難だと思います。